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岐阜地方裁判所 昭和63年(わ)578号 判決 1989年5月30日

本籍

岐阜県武儀郡洞戸村通元寺一四一番地

住所

岐阜市金華町一丁目一四番地

会社役員

林喜見三郎

昭和四年二月一〇日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、次のとおり判決する(公判出席検察官高畠久尚)。

主文

被告人を懲役二年及び罰金七〇〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金一四万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から四年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、岐阜市金華町一丁目一四番地に居住し、個人で営利を目的とした株式の売買取引を継続して行っていたものであるが、所得税を免れようと企て、配当の支払調書が税務署へ提出されないように保有株式の名義を家族名義等に書換するなどの方法により、所得を秘匿した上、

第一  昭和五九年分の実際所得金額が九二三四万一八八八円であつて、これに対する所得税額が五一二七万五一〇〇円であり、その旨申告納付すべきであつたのに、申告期限である同六〇年三月一五日までに、同市千石町一丁目四番地岐阜北税務署署長に対し、所得税確定申告書を提出しないで、右申告期限を徒過し、もつて不正の行為により五一二七万五一〇〇円の所得税を免れ、

第二  同六〇年分の実際所得金額が一億三四八七万四〇三五円であつて、これに対する所得税額が七九二二万四七〇〇円であるのに、同六一年二月二七日、前記岐阜北税務署において、同税務署長に対し、所得金額が九〇七万八六三〇円であつて、これに対する所得税額は既に源泉徴収されており、医療費を控除すると三万三〇〇円の還付を受けることとなる旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により右正当所得税額との差額七九二五万五〇〇〇円の所得税を免れ、

第三  同六一年分の実際所得金額が二億九〇三八万四四〇円であつて、これに対する所得税額が一億八九六一万四六〇〇円であり、その旨申告納付すべきであつたのに、申告期限である同六二年三月一六日までに、前記岐阜北税務署長に対し、所得税確定申告書を提出しないで、右申告期限を徒過し、もつて不正の行為により一億八九六一万四六〇〇円の所得税を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部について

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書(三通)

一  被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書(一二通)

一  被告人作成の上告書

一  林登志子の検察官に対する供述調書

一  林登志子の大蔵事務官に対する質問てん末書(二通)

一  天野登志恵の検察官に対する供述調書

一  天野登志恵の大蔵事務官に対する質問てん末書

一  天野登志恵作成の上申書

一  土田美智子の検察官に対する供述調書

一  土田美智子作成の上申書

一  篠田啓子の大蔵事務官に対する供述調書

一  林和彦、服部正樹、渡辺孝之、日高英勝(二通)、水谷真啓(二通)、篠田昭三の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  大蔵事務官作成の各査察官調査書(八通)

一  大蔵事務官作成の各証明書(四通)

一  検察事務官作成の捜査報告書

(法令の適用)

一  (罰条と刑種の選択)

判示各所為につき 所得税法二三八条一項に該当するので、懲役刑と罰金刑を併科し、かつ、情状により同条二項を適用する。

一  (併合罪の処理) 刑法四五条前段、懲役刑について同法四七条本文、一〇条(犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重)、罰金刑について同法四八条二項

一  (労役場の留置) 同法一八条

一  (刑の執行猶予) 懲役刑につき同法二五条一項

以上の理由により、主文のとおり判決する。

(裁判官 三宅俊一朗)

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